ISO9001:2026規格改訂内容のご案内
規格改訂の趣旨
1.真に有効な品質マネジメントシステムへの変革
取組の前提となる概念の強調(単純にルールや手順を設けるだけでは足りない心がまえのようなもの)や、これまで軽視されがちであった機会への取組みの強調等により、経営的に真に有効な品質マネジメントを促進する意図が見受けられます。
2.他のマネジメントシステムとの整合性向上(附属書SL/HSへのより強い準拠)
既に他の規格で設けられている「用語の統一」「要求事項の追加」「各要求事項の順序の変更(主に9001特有の要求を共通の要求よりも後にもってくる変更)」等、整合性の向上を図った改訂が見受けられます。1と異なり形式的な変更が多いので、量は多いのですが対応は比較的容易です。
新規格への移行期限
規格要求事項には定期的な改訂があり、改訂版が発行されてから一定期間内の移行(改訂版を適用して審査を受審すること)が必要です。
改訂の内容に応じて移行期間が設定されますが、今回は発行日から3年とされています(正確には3年経過した月の末日までとなります)。具体的には、改訂版が2026年9月に発行されたため、移行期限は2029年9月末と見込まれます。
この期間内に2026年版を適用して移行審査を受ける必要があり、一般的には定期審査や再認証審査に合わせて受審することになります。
ISO9001:2026の改訂概要
改訂される要求事項の変更点をご説明します。各要求事項の改訂を以下のように、注意度として4段階で分類しました。
- 「高」:要求の追加や大きな変更があり、影響が大きい
- 「中」:要求の追加や変更はあるが、影響は小さい
- 「低」:項番の順序変更や表現変更のみで趣旨の変更は無い
- 「無」:変更が無い
4 組織の状況
| 項番 | 要求事項 | ISO9001:2015及びAmd1:2024からの変更点 | 注意度 |
| 4.1 | 組織及びその状況の理解 |
| 無 |
| 4.2 | 利害関係者のニーズ及び期待の理解 |
| 中 |
| 4.3 | 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定 |
| 低 |
| 4.4 | 品質マネジメントシステム | ・4.4.2の表現が若干変更されているが、趣旨の変更は無い。 | 低 |
5 リーダーシップ
| 項番 | 要求事項 | ISO9001:2015及びAmd1:2024からの変更点 | 注意度 |
| 5.1 | リーダーシップ及びコミットメント |
| 高 |
| 5.2 | 方針 |
| 低 |
| 5.3 | 役割、責任及び権限 |
| 低 |
6 計画
| 項番 | 要求事項 | ISO9001:2015及びAmd1:2024からの変更点 | 注意度 |
| 6.1 | リスク及び機会への取組み |
| 高 |
| 6.2 | 品質目標及びそれを達成するための計画策定 |
| 低 |
| 6.3 | 変更の計画 |
| 中 |
7 支援
| 項番 | 要求事項 | ISO9001:2015及びAmd1:2024からの変更点 | 注意度 |
| 7.1 | 資源 |
| 中 |
| 7.2 | 力量 |
| 低 |
| 7.3 | 認識 |
| 中 |
| 7.4 | コミュニケーション | ・変更無し | 無 |
| 7.5 | 文書化した情報 | ・変更無し | 無 |
8 運用
| 項番 | 要求事項 | ISO9001:2015及びAmd1:2024からの変更点 | 注意度 |
| 8.1 | 運用の計画及び管理 |
| 低 |
| 8.2 | 製品及びサービスに関する要求事項 |
| 中 |
| 8.3 | 製品及びサービスの設計・開発 |
| 低 |
| 8.4 | 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理 |
| 中 |
| 8.5 | 製造及びサービス提供 |
| 中 |
| 8.6 | 変更の管理 |
| 無 |
| 8.7 | 不適合なアウトプットの管理 |
| 無 |
9 パフォーマンス評価
| 項番 | 要求事項 | ISO9001:2015及びAmd1:2024からの変更点 | 注意度 |
| 9.1 | 監視、測定、分析及び評価 |
| 低 |
| 9.2 | 内部監査 |
| 中 |
| 9.3 | マネジメントレビュー |
| 中 |
10 改善
| 項番 | 要求事項 | ISO9001:2015及びAmd1:2024からの変更点 | 注意度 |
| 10.1 | 継続的改善 |
| 低 |
| 10.2 | 不適合及び是正処置 |
| 低 |
各要求事項共通
| 1 | 「文書化した情報を保持しなければならない」⇒「文書化した情報を利用可能な状態にしなければならない |
|
| 2 | 「改善」⇒「継続的改善」 | 趣旨は変わらない。なお、9.3.2のマネジメントレビューのインプットの「改善の機会」の表現はそのまま。 |
改訂解説(注意度「中」以上のみ)
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解
c)「それらの要求事項のうち、品質マネジメントシステムを通して取り組むもの」を追加
要求は追加されていますが、趣旨に変更はありません。この要求が追加されたことで、利害関係者からの全ての要求に取り組む必要が無いことが逆説的に明確になりました。
なお、ISO27001などでは既に要求されている内容です。
具体的な対応
特定した利害関係者からの要求を品質マネジメントシステムにて取り組むものと取り組まないものに分類する(取り組むものだけを識別すればよい)。
5.1 リーダーシップ及びコミットメント
「i) 品質文化及び倫理的行動を促進する」が新設
a)からj)として列記されてた項目に、新たに「i)品質文化及び倫理的行動を促進する」が追加されました。
品質文化とは
ISO9000:2026では、品質文化を「品質方針及び品質目標の達成、並びに顧客及びその他の利害関係者のニーズ及び期待を満たす製品及びサービスの提供を支援する文化」としていますが、品質に関する組織の意識や価値観などを意味すると考えらえます。また、倫理的行動も品質文化を構成する重要な要素の一つと言えます。個人の考え方や行動に影響する要素と捉えると分かり易いかもしれません。
例えば、「ミスそのものが非ではなく、ミスを隠蔽することこそが非であるという認識の定着」、「ミスを責めるのではなく積極的に共有・分析して改善に繋げることを良しとするような風土の醸成」といった具合です。従業者の意識等の土壌を醸成して真に有効な品質マネジメントとすることがこの要求の趣旨と考えられます。
倫理的行動とは
「法令遵守」の先にある概念であり、法令を遵守するだけでは、「正しい行動」や「善い行動」であるとは言えない可能性があります。よくある「法令には違反していないが・・・」という状態において、正しい行動を自発的にとれるようにすることが倫理的行動の促進と言えます。
例えば、困っている人を助けなくても法令違反にはならないかもしれませんが、そこで助けるのが倫理的行動と言えるかもしれません。品質マネジメント的には、「不具合やミスが発生した際に、包み隠さず速やかに報告する」といった行動が典型例かもしれません。
具体的な対応
1.自組織にとっての品質文化や倫理的行動の内容を検討する(自組織のあるべき姿を検討する)。※既存の行動規範等があればそれを見直しましょう。
2.検討した内容を周知・啓発する(例えば方針や行動規範等に反映してホームページに掲載する・社内に掲示する、教育を実施する)。
6.1.2 リスクへの取組み、6.1.3 機会への取組み
1.「旧6.1.2」が「新6.1.2 リスクへの取組み」「新6.1.3 機会への取組み」に分割
2.リスクや機会を決定するだけでなく、「分析」と「評価」が追加
2015年版では、リスクと機会への取組みについて、まとめて6.1.2で要求されていましたが、リスクについては6.1.2、機会については6.1.3で個別に要求されるようになりました。これにより、リスクと機会は別の対象として検討する必要があることが明確になったと言えます。
また、2015年版ではリスクや機会を決定して取り組むことだけが求められていましたが、「分析」と「評価」が追加されました。手順的には
- ①リスクや機会を決定する
- ②決定したリスクや機会を分析する
- ③分析したリスクや機会を評価する
- ④評価結果に応じて対応する
となります。ただし、ISO27001のように具体的な分析や評価の基準や手順を決定することは求められていません。
分析と評価さえ追加すれば、あとは旧要求事項が分割されたのみなので要求事項の大枠は変わらないのですが、実態上は「リスクは決定していても機会は決定していない」というケースが散見されます。機会への取組みを強調するのは、「より有効なマネジメントシステムを目指そう」というメッセージのように見えます。
リスクとは?機会とは?
規格上では、リスクは「望ましくない影響を持ち得る」、機会は「望ましい影響を持ち得る」としています。全く正反対の性格を持つように見受けられますが、実際は表裏一体の関係と考えられます。
リスクや機会を決定する際には、4.1の課題、4.2の要求事項を考慮することが求められていますが、同じ課題でもリスクの決定に繋げる組織もあれば、機会の決定に繋げる組織もあります。
例えば、新たな技術(例えばAI等)革新があった際、それを利用する際のマイナスの影響を連想する組織もあれば、利用することによる業務効率化などを連想する組織もあるはずです。
なお、この例での機会への取組は、「〇〇業務における生成AIの利用による生産性向上」といった具合になります。
業務中断リスク
注記にて「業務の中断中及び中断後に、適合した製品及びサービスを提供する能力に関連するリスクが含まれ得る。」とあるので、業務中断に関するリスクは検討すべきです。例えば、インシデントが発生した場合でも品質を保つことができるようにリスクを分析して対応するといった具合です。結果的にはBCPに近い対応になるかもしれません。
具体的な対応
1.リスク及び機会への取組みのプロセスに分析と評価を加える(例えば、文書様式に分析欄と評価欄を設ける)
2.実際に分析と評価を実施する
※リスクは決定しているが、機会を決定していない場合は、機会も決定することが必要と考えられます。
6.3 変更の計画
1.「意図した結果を達成するために変更が効果的に実施されることを確実にするため」が挿入
2.c)「資源の利用可能性」⇒「資源及び情報の利用可能性」に変更
3.e)「変更の有効性の監視及び評価方法」を追加
4.f)「変更の伝達」を追加
5.g)「変更の結果のレビュー方法」を追加
行き当たりばったりでQMSを変更するのではなく、a)からg)を考慮して計画的に実施することを要求しています。
1の文言追加については、実態上の影響は無いと考えられます。
2の変更については、資源の利用可能性の検討(どのような資源が必要でどの程度利用することができるかを検討すること)の際に、情報も考慮することを求めていますが、もとより情報も資源の一部として考慮している場合は対処不要です。
また、3~5については、それぞれ変更計画時に手法を決定することが求められます。
具体的な対応
追加変更された事項を各種変更を検討する際に考慮する。
※文書化は要求されていませんが、実態上少なくとも記録は作成することになるはずです。例えば、「稟議書に記録する」「委員会のような会議体で口頭で申請する場合は議事録に記録する」「マネジメントレビューの際に変更するのであればマネジメントレビューの記録に残す」といった対応が考えられます。
7.1.6 組織の知識
「製品及びサービスの適合を達成するために必要な知識」が「品質マネジメントシステムの意図した結果を達成するために必要な知識」に変更
必要な知識の対象が拡大されたと解釈することができます。例えば、文書管理のために必要な知識、監視測定や分析のために必要な知識など挙げだしたらきりがありません。製品の製造やサービスの提供プロセスに絞って必要な知識を特定されている場合は、対象を拡大しましょう。
なお、注記に、知識の入手元として「知的財産」が加わっているのは、生成AIからの情報取得を想定しているのかもしれません。
具体的な対応
品質マネジメントの各プロセスにおいて必要な知識の特定漏れを確認し、漏れていれば補完する。
7.3 認識
e)「組織の品質文化及び倫理的行動」を追加
品質文化及び倫理的行動の意図については、改訂詳細①をご覧になってください。品質方針等を組織の管理下で働く人々に認識させることが要求されていましたが、そこに品質文化と倫理的行動が加わったのみです。
具体的な対応
品質文化や倫理的行動の内容を周知・啓発する(例えば方針や行動規範等に反映してホームページに掲載する・社内に掲示する、教育を実施する)
※改訂詳細1と被るので、同時対応で支障はありません。
8.2.1 顧客とのコミュニケーション
1.e)の「関連する場合」が「提供する製品又はサービスの中断に関する場合を含む」に変更。
2.「特定の要求事項の確立」が「対応に関する情報」に変更された。
3.注記に顧客とのコミュニケーションの例が示された。
6.1.2と同様に事業中断時の視点が強調されました。事業中断時の製品の供給、サービスの提供に関する情報を、注記に示す例を参考にして提供する必要があります。近時ではサイバー攻撃、海外の紛争による資源の供給不足などによる事業の停止・遅延が典型例です。
具体的な対応
6.1.2で検討したリスクをふまえて停止・遅延時の対応をコミュニケーションに含める(契約書に記載する、ホームページに掲載する、SNSで発信する等)。
8.4 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理
「8.4.3 外部提供者に対する情報」のd)に「組織の顧客及び他の密接に関連する利害関係者と外部提供者との相互作用」を追加
旧規格では、組織(自社)と外部提供者(委託先や購買先等)との相互作用に関する要求事項を伝えればよかったのですが、そこに「顧客や他の密接に関連する利害関係者」と「外部提供者」の相互作用に関する要求事項が追加されました。
なお、「他の密接に関連する利害関係者」には、おそらく顧客の先にいる所謂最終顧客や、外部提供者による再委託先などが含まれると考えられます。また、相互作用は日本語にすると意味が分かりにくいのですが、立場や役割を意図していると考えられます。したがって、例えば顧客と外部提供者の間の役割に関する要求事項を伝達するといった具合です。
具体的な対応
外部提供者に対する仕様書や外部提供者との契約書に、顧客との間の役割(例えばドロップシップ型の納品であれば納品方法等に関する要求等)を記載する。
8.5.1 製造及びサービス提供の管理
a)において文書化した情報を利用できるようにするだけでなく、「使用する」ことが求められるようになった。
一見すると影響が無いように見えますが、「文書は存在して必要な際に利用できるようになってはいるが、実際は使用されていない」というケースが散見されるため、そのような状態の解消を求めていると考えられます。例えば、製造の際に仕様書や図面が作成され、どこに保管保存されているかまで周知されているにもかかわらず、誰も見ていないようなケースです。
具体的な対応
運用の問題なので、文書を修正するだけでは対処不能。監視や監査した結果に基づき、指導が必要。
9.2 内部監査
9.2.2 内部監査プログラムのa)の明確にする対象に「監査目的」を追加
旧規格では、監査基準及び監査範囲を明確にすることを求めていましたが、そこに「監査目的」が追加されました。監査は年次で行われるものだけではなく、事故発生後に臨時で実施するような監査も有り得ます(その場合は、例えば「〇〇の是正処置実施状況確認」といった目的になり得ます)。
それぞれ目的が異なるはずなので、それを明確にすることが求められます。また、年次で実施される監査であっても、各回においてテーマが異なる可能性もあります。
なお、監査の有効性を評価する際、目的に対して結果がどうであったのかという視点で評価することをお奨めします。そのためにも目的の明確化は必要となります。
具体的な対応
1.監査計画策定時に「監査目的」を設定する(監査計画書の様式に目的欄を追加する)。
2.監査報告書作成時「監査目的」を記載する(監査報告書の様式に目的欄を追加する)。
9.3 マネジメントレビュー
9.3.2 マネジメントレビューへのインプットにc)として「品質マネジメントシステムに関連する利害関係者のニーズ及び期待の変化」を追加
4.2で特定した内容の変化についての報告が追加されました。ISO27001などでは既にインプットとして要求されているので、ISMSを構築されている場合などは既に対応済みのはずです。
なお、4.2では文書化を求めていませんが、4.2において監視やレビュー、9.3では変化の報告が求められるため、実態上は文書化が必須と考えられます。4.1の課題も同様です。
具体的な対応
マネジメントレビューのインプットに利害関係者のニーズ及び期待の変化を追加する(マネジメントレビューの記録様式が存在し、インプットを項目別に設けている場合は欄の追加が想定されます)。
移行タスク
| 内容 | 想定所要時間 | |
| 1 | 2015年版と2026年版の差分理解 | ~2ヶ月 |
| 2 | 品質文化及び倫理的行動の内容検討、組織内での認識促進 | |
| 3 | リスク及びその対応の見直し | |
| 4 | 機会及びその対応の見直し | |
| 5 | QMS変更時の手順見直し | |
| 6 | 資源の見直し | |
| 7 | 内部監査計画及び報告書様式見直し | |
| 8 | マネジメントレビュー記録様式見直し | |
| 9 | 記録類の保管方法見直し(利用可能な状態とする) | |
| 10 | その他項番統合や順序変更に伴う文書改定(必須とは言えない) | |
| 11 | 内部監査員の教育訓練 | ~2ヶ月 |
| 12 | 内部監査の実施(2~9を前提にした監査が必要) | |
| 13 | マネジメントレビュー(2~12を前提にしたレビューが必要) |
支援例
1.基本支援(所要時間~2ヶ月) ※「移行のための主なタスク」1~9の対応
- ①既存QMS文書データをお預かりし、内容を確認します。
- ②規格改訂内容に合わせて、既存QMS文書の改定案を作成します。
- ③2で作成した改定案を読み合わせしながら、規格改訂内容を解説します。
- ④読み合わせ結果に応じてQMS文書改定案を修正します。
2.オプション支援
内部監査員養成研修の実施
※ その他「教育訓練」「内部監査」「審査対応」等の支援も承りますので、よろしければご相談ください。
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