ISO14001規格改訂2015年版について

ISO14001が2004年版から2015年版に改訂されました

マネジメント系のISO規格(ISO9001、ISO14001、ISO27001など)は、「定期的に内容
(要求事項)を見直す」という規定があります。
ISO14001は、2004年に「1996年版」から「2004年版」への改訂がなされ、さらに今回「2004年版」から「2015年版」への改訂がなされました。
この規格改訂に伴い、ISO14001:2004(2004年版)は、2018年9月に失効しました。

規格改訂とは?

ISO14001改訂の対応期限

2015年9月15日にISO14001の改訂版が発行され、JIS規格(JIS Q 14001:2015)は11月20日に発行されました。ISO14001の改訂版が発行された日より3年以内に、運用中の環境マネジメントシステム(EMS)を見直し、審査を受審する必要があります。この期限がギリギリになりますと、審査申込みが混雑することと予想されますので、早めのご対応をお勧めいたします。

2015年 2016年 2017年 2018年
9月15日 11月20日 ・・・ ・・・ 9月14日
2015年版
発行
JIS 発行 2008年版
認証失効

2015年版発行から「3年以内」に移行審査受審

※審査側の手続きを考慮すると、遅くとも2018年8月には 移行審査が完了している必要があります。
なお、一般的には3ヵ月以上の運用実績が必要となるので、それを考慮したスケジューリングが必要です。

「2018年」の移行審査受審について

1. 2018年9月14日までの移行期限を過ぎてしまう場合

2018年9月15日以降はISO9001の2008年版は失効し、認証が必要な場合は、あらためて初回審査を受審することになります。ただし、審査機関によっては失効から6ヵ月以内の再認証審査であれば、審査工数の削減が可能であるとの事ですので、受審される審査機関へご確認ください。

2. 審査の前倒しについて

審査の基準日(基準日:第二段階審査の終了した日をいう)から、審査を前倒しすることが可能です。
①維持審査の場合は基準日から6ヵ月前まで前倒しが可能
②更新審査の場合は基準日から3ヵ月前まで前倒しが可能
(3ヵ月前よりもさらに前倒ししたい場合は「有効期限」も前倒しされます。)

例:基準日が2018年10月1日の場合

維持審査の場合
【例】基準日が2018年10月1日の場合
更新審査の場合
【例】基準日が2018年10月1日の場合

※注意

図は、2018年に移行審査を受審される場合の対応となりますので、通常の維持審査・更新審査の受審フローと異なります。
また、審査機関によって見解が異なる場合がございますので、受審される審査機関へご確認ください。

2015年版改訂の特徴

1. 他のマネジメントシステムとの親和性向上

ISO9001等他のISO規格と基本構造を共通化することにより、複数のマネジメントシステムを統合し易くなりました。
具体的には、
①用語の統一
②項番の統一(項番4は9001でも14001でも27001でも「組織の状況」)
※「規格要求構成の変更」を参照
を意味しています。

影響:EMS文書を「要求事項番号に沿って」作成されている場合は、2015年版の構成に合せて文書を改定しないと、要求事項との対応が取れずに混乱する可能性があります。

規格要求構成の変更

見た目の変更箇所としては、2004年版と2015年版を比較すると次の通りです。

  • 2004年版 要求事項

    4.1 一般要求事項

    4.2 環境方針

    4.3 計画

    4.4 実施及び運用

    4.5 点検

    4.6 マネジメントレビュー

  • 2015年版 要求事項

    4. 組織の状況

    5. リーダーシップ

    6. 計画

    7. 支援

    8. 運用

    9. パフォーマンス評価

    10.改善

2. 一貫性の要求、経営との統合の要求

「組織の目的」→「課題・ニーズ」→「リスク」→「目標設定」→「活動」という繋がりが重視され、経営的な視点に基づいた一貫性が求められるようになります。その意図は持続的な成功(持続的にパフォーマンスを上げていくこと)の実現にあります。要は「実りのある活動」にしていこうということです。

改訂の趣旨を理解するために、少なくとも次の「規格要求の関連性」は理解しておきましょう。

影響:要求事項が新設されていますので、その対応(成果物の作成等)と、その結果をふまえた(結果と整合性が取れる)適用範囲の見直しや目標の見直しが必要となります。

規格要求の関連性

規格要求の関連性

各論1 ~新設要求事項~

4.1   組織及びその状況の理解

以降の要求事項の前提となる要求事項であるため、非常に重要です。本要求事項で特定された課題をふまえて適用範囲が決定されていること、特定された課題がリスクや機会の特定時に考慮されている必要があります。

外部課題の例   法令の新設・改定、市場ニーズ・価値観の変化、自然災害といった「脅威や機会」

内部課題の例   人的資源、設備環境、供給者の経営状況といった「弱みや強み」

文書化要求はありませんが、監視・レビューが要求されているうえに、マネジメントレビュー時に課題の変化をインプットすることが要求されているため、現実的には文書化が必要と考えられます。

4.2   利害関係者のニーズ及び期待の理解

4.1と同様に、以降の要求事項の前提となる要求です。
利害関係者は規格要求上定義されていないので、各組織毎に検討が必要です。

利害関係者の例   顧客、供給者、行政、従業者、近隣住民、地域社会

6.1   リスク及び機会への取組み

2004年版では、「4.4.7 緊急事態への準備及び対応」「4.5.3 予防処置」にその趣旨の一部が現れている程度だったリスクマネジメントの概念が明示されました。
リスクと機会の解釈は、ISO規格間でも異なっていますが、ISO14001では概ね以下の通りです。

リスク
潜在的で有害な影響(脅威)
例)異物混入、汚染物質の流出、従業者の退職による業務の精度低下

機会
潜在的で有益な影響
例)自社に有利な法令の施行・市場ニーズの変化

6.1.4   取組みの計画策定

著しい環境側面、順守義務、リスクや機会を特定しただけでなく、対処することを要求しています。


「リスク対応計画」に落とし込んで対処する。「教育」に落とし込んで対処する。「監視・測定」に落とし込んで対処する。

各論2 ~主な変更要求事項~

4.3   品質マネジメントシステムの適用範囲の決定

特定のサイト、業務を適用範囲から除外している場合、その除外が、 「4.1 組織及びその状況の理解」「4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解」 に対応した結果と整合が取れない場合、適用範囲の見直しが必要になるかもしれません。


「ビルメンテナンスを行っている会社が、事業のうち大規模主膳業務を除外する」

環境負荷の高い業務をあえて除外するのは妥当か?

5.1   リーダーシップ及びコミットメント

EMSを独立した活動とするのではなく、経営と統合(事業活動に取り込む)することを要求し、2004年版よりもトップマネジメントの強い関与を求めるようになりました。そのため、審査時のトップインタビューで問われる内容が増えています。なお、2004年版と同様に「・・・確実にする」とされている要求は権限移譲が可能ですが、その他はトップマネジメントの直接関与が必要なので、ご注意ください。
(特にトップインタビュー時)

トップインタビューの新たな論点「例」

  • 4.1で特定された課題の内容
  • 4.2で特定された利害関係者及びニーズとその中で遵守義務となる内容
  • 6.1で特定されたリスク及び対処内容

5.3   組織の役割、責任及び権限

2004年版で求められていた「管理責任者」の文言が削除されました。2015年版では、必要な責任と権限を割当てることを要求しています。したがいまして、2004年版のまま、管理責任者を設置しても、設置せずに責任と権限を割当ててもどちらでも構いません。なお、文書化の要求は削除されました。

6.1   リスク及び機会への取組み

6.1.2 環境側面

ライフサイクルに沿った環境側面の特定が要求されるようになりました。したがいまして、あらためて視点から抜けているプロセスの有無を確認したうで、抜けているようでしたら追加が必要となります。


対外的に公表している業務が視点から抜けているような場合
なお、環境側面特定時に、緊急事態を考慮に入れることが追加要求されています。また、著しい環境側面の特定が要求されていることは変わりませんが、著しい環境側面と判断した「基準」の文書化が明示されています。

6.2   環境目標及びそれを達成するための計画策定

6.2.1 環境目標

特定されたリスク及び機会を考慮した設定が要求されています。

6.2.2 環境目標を達成するための取組みの計画策定

計画には以下の内容を組みこむことが追加されています。
「必要な資源」「結果の評価方法、進捗を監視するための指標」

7.2   力量

著しい環境側面にかかわる業務に携わっている人だけでなく、「パフォーマンスに影響を与える業務や遵守義務を満たすために必要な業務に携わる人」に変更されました。これにより、力量を管理すべき対象が拡大する可能性があるので、見直しが必要となります。

7.5   文書化した情報 の管理

7.5.3 文書化した情報の管理

情報セキュリティの要求(機密性、完全性、可用性の考慮)が追加されています。

「文書化された情報の維持」とは

「プロセスの運用を支援するための文書化した情報の維持」が要求されるようになりました。
例)工程図、作業要領 等の規程や手順の類

「文書化された情報の保持」とは

「プロセスが計画どおりに実施されたと確信するための文書化した情報の保持」が要求されるようになりました。
例)議事録、検査記録 等の記録類

※上記は特段目新しい要求ではありませんが、維持を要求されている文書はルールや手順類、保持を要求されている文書は記録類であることをご認識ください。

8.1   運用の計画及び管理

計画した変更によって生じた結果(意図しない変更によって生じた結果:副作用のようなもの)を考慮して、悪い影響が出る可能性がある場合は、それを予防することを要求しています。

例)設備を増設したり変更した場合

供給電力が過剰ではないか?

9.1   監視、測定、分析及び評価

9.1.1 監視、測定、分析及び評価

2004年版では、「監視」「測定」までの要求だったところに「分析」「評価」要求が加わりました。有効性やパフォーマンスを「評価」するために必要な対象を「監視」「測定」することが要求されています。評価するためには、基準を設ける必要があることにご注意ください。

9.1.2 順守評価

評価するだけでなく、対処が必要であることを明示しています。また、順守評価の際に、適合しているかどうかを判断する人に、必要な知識(法規制の知識等)が備わっており、理解しているかどうかが問われるようになっています。したがって、順守義務の実務担当者以外が評価しているようなケースはご注意ください。

9.3   マネジメントレビュー

2004年版のインプットに加えて、主に2015年版で新設された要求事項に関する情報(課題やニーズの変化)が考慮事項(インプットが考慮事項となりました)として追加されました。また、アウトプットに含めるべき事項が明示されています。

10   改善

10.2 不適合及び是正処置

2004年版の要求に加えて、同様の不適合が他の部門等で発生しないように対処することを要求しています。その際に、「類似の不適合の有無を確認すること」、無ければ「同様の不適合が発生する可能性を検討すること」が要求されます。

予防処置の文言削除

2004年版の「4.5.3 予防処置」は削除されました。ただし、リスクマネジメントという形に置き換わっただけであり、予防の概念自体は残っております。他の要求事項については、文書化された手順の要求が無くなった場合でも、あえて既存文書を削除する必要はありませんが、当該要求については、同様の趣旨の要求(リスク対応)と重複しないように削除されたほうがよろしいかと思います。

2015年版改訂に伴い行うべきこと

2015年版への改訂に伴い、私たちが行わなければならないことを表にまとめました。

必須/検討 内容
必須 2015年版規格の内容の理解
必須 新設、変更要求事項に対応した規模や様式の見直し
必須 新設、変更要求事項に対応した成果物の作成
必須 文書類を要求事項番号順に作成している場合は、構成と表現の変更を行う。
(項目の順番入替など)
必須 従業者への変更内容の周知
必須 内部監査員の教育
必須 2015年版に対応した内部監査及びマネジメントレビューの実施

帝国データバンクネットコミュニケーションの支援例

帝国データバンクネットコミュニケーションでは、ISO14001認証を取得された企業様にて、次のようなことでお役に立ちます。

支援例1-EMS文書改訂、新設要求事項対応

2015年版への改訂対応のための文書作成支援例です。

1 お手元のEMS文書データをお預かりし、改訂原稿を作成します。
2 改訂原案を読み合わせながら、具体的な改訂内容(新設要求事項や変更要求事項の内容)を説明します。
また、対応する成果物の作成手順を説明します。
3 改訂原案の修正結果をレビューするとともに、上記成果物の内容を確認します。

支援例2-文書統合

支援例2- 文書統合
1 業務内容、組織体制、論理環境、他のマネジメントシステムを含めた文書の内容調査
2 改訂統合方針(どのような文書構成にするか)を決定
3 統合文書原案を作成
4 統合文書原案をお客様とレビューし、必要に応じて修正

支援例3-EMS運用

  • 内部監査立ち会い

  • 教育資料作成・研修の実施
    – 内部監査員研修など –

  • マネジメントレビュー
    立ち合い

  • 模擬審査・
    審査指摘事項の対応

  • アドバイザリー(相談受付)
    運用管理

  • 審査立ち合い

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