ISO14001:2026規格改訂

ISO14001:2026規格改訂では、全体的に大きな変更ではありません。要求事項に具体例を追記するといった理解度を高めるための所謂ブラッシュアップが主であり、新設の要求は非常に少ないです。

なお、既に他の規格で設けられている要求事項の追加、各要求事項の項順の変更等、整合性の向上を図った改訂が見受けられます。該当する要求事項は少ないものの、これにより、従来より他のマネジメントシステムとの統合をし易くなっております。

新規格への移行期限

規格要求事項には定期的な改訂があり、改訂版が発行されてから一定期間内の移行(改訂版を適用して審査を受審すること)が必要です。

改訂の内容に応じて移行期間が設定されますが、今回は発行日から3年とされています(正確には3年経過した月の末日までとなります)。具体的には、改訂版が2026年4月に発行されたため、移行期限は2029年4月末と見込まれます。

※ JISQ14001:2026も2026年8月に発行されています。

ISO14001:2026新規格への移行期限

この期間内に2026年版を適用して移行審査を受ける必要があり、一般的には定期審査や再認証審査に合わせて受審することになります。

ISO14001:2026の改訂概要

改訂される要求事項の変更点をご説明します。注意度は、影響を4段階で表しています。

  •  「高」:影響が大きい
  •  「中」:要求の追加や変更はあるが影響は小さい
  •  「低」:項番の順序変更や表現変更のみで趣旨の変更は無い
  •  「無」:変更が無い、もしくは実質的に変更は無い

4 組織の状況

項番要求事項ISO14001:2015及びAmd1:2024からの変更点注意度
4.1組織及びその状況の理解
  • ・課題に含めなければならない環境状態が具体的に示された。
4.2利害関係者のニーズ及び期待の理解
  • ・特定された遵守義務となるニーズや期待のうち、EMSで取り組むものを特定することが要求されるようになった。
  • ・注記が追加された。
4.3環境マネジメントシステムの適用範囲の決定
  • ・一部の考慮事項が具体的になった。
  • ・文書化した情報の管理要求が変更になった。
4.4環境マネジメントシステム変更無し

5 リーダーシップ

項番要求事項ISO14001:2015及びAmd1:2024からの変更点注意度
5.1リーダーシップ及びコミットメント
  • ・「管理層」という表現が「役割」という表現に変更されたが、文脈上影響は無いと考えられる。
5.2環境方針
  • ・注記の表現が多少変わっているが、影響は無いと考えられる
  • ・文書化した情報の管理要求が変更になった。
5.3役割、責任及び権限変更無し

6 計画

6.1 リスク及び機会への取組み

項番要求事項ISO14001:2015及びAmd1:2024からの変更点注意度
6.1.1一般
  • ・旧6.1.1の内容が、6.1.1、6.1.2、6.1.4に分解された。
  • ・文書化した情報の管理要求が変更になった。
6.1.2環境側面
  • ・旧6.1.1の内容の一部が移ってきた。
  • ・注記が追加された。
  • ・環境側面を決定する際の考慮事項の構成が変更された。
  • ・文書化した情報の管理要求が変更になった。
6.1.3順守義務
  • ・文書化した情報の管理要求が変更になった。
6.1.4リスク及び機会
  • ・新設ではあるが、旧6.1.1の一部が移ったのみ。
  • ・文書化した情報の管理要求が変更になった。
6.1.5取組みの計画策定
  • ・6.1.4から6.1.5に項番が変わったのみ。

6.2 環境目標及びそれを達成するための計画策定

項番要求事項ISO14001:2015及びAmd1:2024からの変更点注意度
6.2.1環境目標
  • ・文書化した情報の管理要求が変更になった。
6.2.2環境目標を達成するための取組の計画策定変更無し

6.3 変更の計画策定

項番要求事項ISO14001:2015及びAmd1:2024からの変更点注意度
6.3変更の計画策定新設

7 支援

項番要求事項ISO14001:2015及びAmd1:2024からの変更点注意度
7.1資源変更無し
7.2力量
  • ・文書化した情報の管理要求が変更になった。
7.3認識変更無し

7.4 コミュニケーション

項番要求事項ISO14001:2015及びAmd1:2024からの変更点注意度
7.4.1一般
  • ・僅かに表現が変わっているが、影響は無い。
  • ・文書化した情報の管理要求が変更になった。
7.4.2内部コミュニケーション変更無し
7.4.3外部コミュニケーション変更無し

7.5 文書化した情報

項番要求事項ISO14001:2015及びAmd1:2024からの変更点注意度
7.5.1一般変更無し
7.5.2作成及び更新変更無し
7.5.3文書化した情報の管理変更無し

8 運用

項番要求事項ISO14001:2015及びAmd1:2024からの変更点注意度
8.1運用の計画及び管理
  • ・一部表現の変更はあるが、要求の趣旨に変更は無い。
  • ・文書化した情報の管理要求が変更になった。
8.2緊急事態への準備及び対応>
  • ・文書化した情報の管理要求が変更になった。

9 パフォーマンス評価

9.1 監視、測定、分析及び評価

項番要求事項ISO14001:2015及びAmd1:2024からの変更点注意度
9.1.1一般
  • ・一部文言の削除と構成の変更があるが、要求の趣旨に変更は無い。
  • ・文書化した情報の管理要求が変更になった。
9.1.2順守評価
  • ・文書化した情報の管理要求が変更になった。

9.2 内部監査

項番要求事項ISO14001:2015及びAmd1:2024からの変更点注意度
9.2.1一般変更無し
9.2.2内部監査プログラム
  • ・文言の順序が一部入れ替わっているが、その点に関しては要求の趣旨に変更は無い。
  • ・a)の明確にする項目が追加されている。
  • ・文書化対象の表現が変更されている。
  • ・文書化した情報の管理要求が変更になった。

9.3 マネジメントレビュー

項番要求事項ISO14001:2015及びAmd1:2024からの変更点注意度
9.3.1一般
  • ・旧9.3の前段部分が独立したが、趣旨は変わっていない。
9.3.2マネジメントレビューへのインプット
  • ・旧9.3の中段部分が独立したが、趣旨は変わっていない。
9.3.3マネジメントレビューの結果
  • ・旧9.3の後段部分が独立したが、趣旨は変わっていない。
  • ・文書化した情報の管理要求が変更になった。

10 改善

項番要求事項ISO14001:2015及びAmd1:2024からの変更点注意度
10.1継続的改善
  • ・旧10.1と10.3が統合され、新たに10.1となった
10.2不適合及び是正処置
  • ・文書化した情報の管理要求が変更になった。

改訂解説

4.1 組織及びその状況の理解

2015年版では、課題に含めるべき環境状態について本文では具体的には言及されていません。2026年版では、課題に含めなくてはならない環境状態として以下を示しています。

  1. 1. 汚染レベル
  2. 2. 天然資源の利用可能性
  3. 3. 気候変動 
  4. 4. 生物多様性
  5. 5. 生態系の健全性 など

※ 2015年版でも附属書Aにて1・2・4に触れられていました。また、3は追補版で要求されています。

3は既に検討しているはずなので、1・2・4・5が漏れていれば検討しましょう。

【参考】生態系の健全性とは?

生態系とは、簡単に言えば生物と環境の機能から成り立っているものを指します。例えば、附属書Aでは、「サンゴ礁」「森林」「湖」などが例として挙げています。

また、健全性とは、これも簡単に言えばその機能や景観等を維持できるかということです。

したがって、これらの生態系を損なっていないか、損なう恐れが無いか検討する必要があります。

4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解

2015年版では、c)でニーズ及び期待の内、組織の順守義務となるものを特定するまでを要求していました。2026年版では、さらにその中でEMSを通じて取り組むべきものを特定することを要求しています。

要求が増えたように見えますが、実態上はEMSを通じて取り組むべきものしか特定していない可能性が高いので、特段のタスクは発生しないと考えられます。

なお、逆に言えば最初にニーズや期待を特定した際には、EMSを通じて取り組まないものが含まれている可能性を考慮しているということになります。言い換えれば、最初は広くニーズや期待を特定することを求めているようにも受け取れます。

2015年版では、注記はありませんでしたが、2026年版では注記が追加されました。

注記1として、「汚染レベル」「天然資源の利用可能性」「気候変動」「生物多様性」「生態系の健全性」などの環境状態に関連するニーズ及び期待が例として挙げられています。

なお、注記2も追加されていますが、 法的要求事項以外の利害関係者の関連するニーズ及び期待が遵守義務となる条件の説明です。

4.1と同様に気候変動については追補版で検討されているはずなので、その他の例の観点で、ニーズや期待を見直しましょう。 

4.3 環境マネジメントシステムの適用範囲の決定

2015年版では適用範囲を決定する際の考慮事項のひとつとして、e)は「管理し影響を及ぼす、組織の権限及び能力」でした。2026年版では「組織の活動,製品及びサービスのライフサイクルにわたって管理し影響を及ぼす,組織の権限及び能力」となりました。

より具体的になりましたが、実態上特筆すべきタスクは発生しません。念のために、管理し影響を及ぼす権限と能力を考慮する際、ライフサイクル全体を俯瞰して検討漏れが無いようにしましょう。例えば、サプライヤーに依存しているプロセスも対象となり得ます。

6.1.1 一般

2015年版で6.1.1にまとめられていた内容の、緊急事態の決定に関する要求が「6.1.2 環境側面」に移り、リスク及び機会に関する要求が新たに「6.1.4 リスク及び機会」として設けられました。なお、旧「6.1.4 取組みの計画策定」は、6.1.5に変更されています。

要求事項が分解されたのみであるため、特筆すべきタスクはありません。強いて言えば、要求事項の項番通りに文書を構成している場合は、文書の構成を変更したほうが分かり易いかもしれません。

6.1.2 環境側面

  1. 1. 緊急事態の決定に関する要求が旧6.1.1から移ってきました。
  2. 2. 「ライフサイクルの視点」の補足として注記が追加され、「原材料の取得,設計,生産,輸送又は配送(提供),使用,使用後の処理及び最終処分」といった例が示されました。
  3. 3. 環境側面を決定する際の考慮事項は、「変更」と「非通常の状況及び合理的に予見できる緊急事態」でしたが、「通常及び非通常の状態」「変更」「潜在的な緊急事態」に再構成されました。

1と3は要求内容が変わったわけではないので特段のタスクはありません。気になるようでしたら文書の構成のみ変更しましょう(文言を入れ替える、表現を変更するといった具合です)。

2は、例示された内容がライフサイクルの視点から抜け落ちていれば見直しましょう。

6.1.4 リスク及び機会

多少の表現の変更はありますが、2015年版の6.1.1におけるEMSの計画策定の際の考慮事項とリスク及び機会の特定に関する要求が6.1.4として独立して新設されました。

要求内容自体に変更は無いため、特筆すべきタスクはありません。EMS文書を規格の項番通りに作成されている場合は、他の要求事項と同様に、文書の構成を変更したほうが分かり易いでしょう。

6.3 変更の計画策定

端的に言えば、「変更する際は行き当たりばったりではなく、計画的に実施しましょう」という意図の要求です。変更とは、例えばルールや手順の変更だけでなく、設備の入れ替え、協力会社の変更といったようにEMSに影響を与える可能性がある変更全般を指します。

なお、ISO9001にも同様の要求があり、そちらのほうが具体的なので、ISO9001を参照したほうが分かり易いかもしれません。

例えば、計画とは

  •  変更の目的を明確にし、変更の影響を想定する。
  •  どのような資源が必要か検討する。
  •  変更に当たっての責任と役割を定める。
  •  周知方法を検討する。
  •  結果の振り返り方法を検討する。

といった要素で構成されます。

8.1 運用の計画及び管理

「・・・外部委託したプロセスが・・・」という記載内容が、「・・・外部から提供されるプロセス,製品又はサービス・・・」となり、対象範囲が拡がっています。

拡大はしていますが、実態上の影響はほぼ無いと考えられます。「外部委託したプロセス」を狭く捉えている場合は、管理や影響を及ぼす対象を見直しましょう。

9.2.2 内部監査プログラム

  1. 1. 冒頭の文言の順序が入れ替わっていますが、趣旨に変更はありません。
  2. 2. a)の明確にする対象に「監査目的」が追加されました。
  3. 3. 2015年版では文書化対象が「監査プログラムを実施した証拠」と「監査結果の証拠」でしたが、加えて「監査プログラム」が明示されました。

監査計画時に監査目的を定めていないようでしたら、追加しましょう。監査の有効性は一般的に監査目的に対してどうなのかという視点で評価することになります。

なお、「監査プログラム」は明確な定義が無いので、監査のルールや手順、年間監査計画や個別の監査計画等ひとまとめを指すと考えても支障はありません。また、「監査プログラムを実施した証拠」と「監査結果の証拠」は、記入された監査チェックリストや監査報告書等が該当します。

9.3 マネジメントレビュー

  1. 1. 旧9.3項の前段冒頭部分が独立して「9.3.1 一般」となりましたが、内容の変更はありません。
  2. 2. 旧9.3項の中段部分a)~g)が独立して「9.3.2 マネジメントレビューへのインプット」となり、「次の事項を考慮しなければならない」が「インプットには次の事項を含めなければならない」となりましたが、大きな内容の変更はありません。
  3. 3. 旧9.4項の後段部分が独立して「9.3.3 マネジメントレビューの結果」となり、「アウトプット」が「結果」となりました。本件も大きな内容の変更はありません。

附属書A「手引き」で多少の趣旨変更はありますが、大枠で変更は無いため、気になるようであれば文書の構成を変更すれば十分と考えられます。

共通

2015年版では、文書について「文書化した情報として維持しなければならない」という表現でした。2026年版では「文書化した情報として利用可能な状態にしなければならない」という表現に変わりました。

維持するのは前提であり、利用可能な状態にしなければならないと受け取れます。したがって、文書が保存されていても利用不可能な状態ではいけませんということです。

例えば、検索不能な状態で段ボールに詰め込んで倉庫に置いておいたり、サーバー内のどこに保存されているか分からないといった状態は不可と考えられます。

移行タスク

内容想定所要時間
12015年版と2026年版の差分理解~1ヶ月
2課題の特定結果見直し
3利害関係者のニーズ及び期待の特定結果見直し
4変更の計画策定に関するルールの策定
5監査計画書様式の改定(監査目的欄の追加)
6記録類の保管方法見直し(利用可能な状態とする)
7その他項番統合や順序変更に伴う文書改定(必須とは言えない)
8内部監査員の教育訓練~2ヶ月
9内部監査の実施(2~8を前提にした監査が必要)
10マネジメントレビュー(2~9を前提にしたレビューが必要)

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